熱性けいれん

熱性けいれんは 乳児期~就学前の子供が発熱した時に、意識消失やけいれん発作などを発生することを言い、日本人は欧米人より発生頻度が高く、概ね10人に1人は経験していると推測されます。

けいれんの起こる年齢や発生頻度

熱性けいれん(Febrile seizure;以下FS)は生後6ヶ月~2歳ごろに発生することが多く、38度以上の発熱があり、熱が上昇してから24時間以内に発生することが特徴です。
ほとんどの場合でけいれん発作は5分以内に治まります。
その後にけいれんが再度起こることは稀(3-4人/100人)ですが、まずは発熱やけいれんの原因について必ず診察してもらってください。
またその後に、また別の発熱時に再発する可能性は平均30%程度です。
ところで、生後6ヶ月以下や6歳以上の熱性けいれんは、ほかに何か病気が隠れている可能性が高くあり、詳しい検査が必要です。

けいれんの一般的な経過

発熱24時間以内にけいれんを起こすことが殆どで、突然に意識が遠のいで、目の動きがおかしくなり、次第に体全体が硬くなり、顔色も真っ青になり、呼吸ができないような発作(強直発作)が十数秒間~以上続きます。
しばらくすると手足がピクピクしてきますが、そのころには呼吸が何とか間欠的にできるようになりますが、手足のピクピクがだんだん大きくなって体全体がガクンガクンするようになりますが、次第に止まってゆきます(間代性けいれん)。
それからは脱力して、ボッーした状態が続くことがありますが、数分経って泣き出し、動こうとするようになり、もとの状態に次第に戻ります。
以上のような状態が5~10分程度以内で起こりますが、実際にけいれんを起こしている時間は数分から1~5分以内です。
すなわち、救急車を呼んで家に到着するころにはほとんどけいれん発作は止まっており、病院に着く頃にはもとの状態に戻っているのが普通です。
逆に救急車が来た時にまだけいれんが起こっている場合は(5-10分以上経過している)、単純な熱性けいれんとは言えず、精密検査や経過観察が必要になります。

注意すべき熱性けいれん

上記のような熱性けいれんは単純性熱性けいれんと呼び、発達などには影響なく、再発の可能性は1/3程度で経過観察となります。
ただし、発熱の原因は診察してもらってください。
一方で、同じように発熱時のけいれんでも注意すべきことが以下にあります。

  • もともと発達の遅れがある場合
  • 発作時間が10~15分以上あった場合
  • 微熱~38度以下で発生した場合
  • 発熱とけいれんがほぼ同時に発生した場合
  • けいれんが先にあり、後で発熱した場合
  • 左右差のあるけいれん発作の場合
  • 生後6ヶ月以内、6歳以上
  • てんかん発作の既往

以上のような場合は、複雑型熱性けいれんとして精密検査を行い、予防の必要性を相談します。
年長児(~12歳ごろ)までFSを繰り返したり、発作時間が長い場合は体質的な異常が潜在している可能性があります。(ドラーベ症候群、熱性けいれんプラス…)

けいれん重積とは

前述のようにFSの発作時間は数分以内がもっとも多く、長くとも15分以内です。
通常の小児科医の判断では5分以上続く発作は精査・要観察と考えられています。
ところで30分以上も続くFSがあります。これをけいれん重積と言いますが、けいれんではなくても朦朧とした状態で不規則な動きを繰り返すなどが続く場合もけいれん重積と言えます。
これらは髄膜炎/脳炎・脳症や、脳の形成異常、難治性てんかん、精神運動発達異常など鑑別診断してゆく必要があります。
前述のように発熱後24時間以内にFSは発症することが多く、2~3日も発熱が続いてから熱性けいれん発作を起こす場合は基礎疾患の検索が必要です。

FSの予防

複雑型熱性けいれんの場合、けいれん予防には発熱時に(通常37.5~38.0度)、抗けいれん効果のあるダイアップ座薬を挿入する方法があります。
体重1kgあたり0.3mg~0.4mgを使用しますので、10kgのお子さんの場合であれば4mgのダイアップ座薬を挿入して8~12時間後にもう1個挿入します。
これでほぼ2-3日は効果が持続できます。この座薬は効果に個人差がありますので、効き過ぎるとふらふらしたりして転倒したり、興奮したりすることがありますので、使用量は主治医に相談してください。
長期的には、最初の1年間は38度前後の発熱でダイアップを挿肛して予防しますが、FSが1年以上ない場合はダイアップの使用するタイミングを遅らせて39度以上まで様子を見ます。
さらにその後1年間、FSがない場合は39.5度以上や急激に体温が上がるインフルエンザなどの場合のみに使用して、またさらに1年間FSがなければ、もうダイアップは使用しなくても良いと考えます。
これらはいろいろな要素を考慮して主治医と相談してください。

熱性けいれん(FS)の発作再発率(杏林大、岡Drより)

初回発作で12ヶ月(1歳)以下・・・・・50%
初回発作で1歳異常・・・・・・・・・・30%
FSが2回以上あれば・・・・・・・・・・50%
両親もしくは片親がFSあれば・・・・・・50%
+発熱と同時にFSあり体温38度前半・・・・80%

<子供のけいれん、意識障害の診断と治療~熱性けいれんを中心に~ 奈医報26(1),2013)>