「忘れてはいけない経験」

Dさん 2B病棟勤務

私が4月に入職してこの半年間で心に一番残ったことは、夜勤勤務の際に患者さまを看取った時のことです。
その患者さまは、日勤帯に意識レベルの低下があったと申し送りがありました。
その夜、血中酸素濃度の低下が見られたので、先輩看護師と一緒に訪室しました。
痰の吸引や体位変換、酸素の投与量増加を行った結果、血中酸素濃度は回復し、一時99%~100%にまで上昇しました。

Dさん 2B病棟勤務

その数値を見て、きっと私は安心してしまったのだと思います。
その後、23時に1人でバイタルサインを測定しに行き、体位変換も行いました。しかし、今回体位変換すると、安定していた血中酸素濃度が低下し始めました。
また咽頭貯留音が著明であったので、すぐに吸引を行いました。
それでも血中酸素濃度は回復せず、どうしようかと途方に暮れていると、先輩看護師が来て瞳孔を確認し、かなり危険な状態だと私に言いました。
つい先ほどまでは血中酸素濃度も安定していたのにと、とても動揺しました。
先輩からご家族に連絡を入れている間に、その方はほとんど脈の拍動を感じなくなってしまいました。
ご家族の到着を待つ間、もしあの時体位変換しなければ、吸引をしなければ家族の皆さまが見守る中で息を引き取ることができたのではないかという考えが、頭の中から離れませんでした。
同時に私は、自分が普段から行っている看護行為が、どれほど患者さまにとって重要で、注意深く観察が必要なものであるかという事を改めて痛感しました。

Dさん 2B病棟勤務

血中酸素濃度の数値だけ見て安心してしまっていたこと、体位変換を行う時間になったからと深く考えずにしてしまったことなど、思い返せば後悔だらけですが、先輩看護師は今回の経験を教訓にして今後に活かしてね、と言ってくださいました。
この患者さまのことは自分の中で一生忘れられない、忘れてはいけない経験であると同時に、教訓として今後の看護に活かしていきたいと思いました。